4月8日に連合の逢見局長は、「福祉人材の確保の促進に関する内容については『全く不十分』と指摘」し、更に「『准介護福祉士制度』を存続することが定められている点について、賃金引き下げにつながる懸念があるとし、『廃止に向けた検討を速やかに行うべき』」と話されました。
福祉人材が不足している中で、准介護福祉士制度の廃止をしたら、更に人材不足が起こるのでは?と記事を一見すると不思議に思ってしまいます。
しかし、この「准介護福祉士制度」ですが、この資格を取得するためには、「介護福祉士国家試験の受験資格を手に入れ、受験をして、『落ちること』」なのです。
実はこの国家資格、フィリピンからの介護福祉士の来日と大きく関連しています。 「フィリピン等の海外から介護の人材を確保するための協定が結ばれていますが、 その協定の中では、4年間の日本滞在期間中に資格を取得することを条件としていました。試験に落ちたら帰国しなければいけないという事態を避けるために、 経過措置として、試験に落ちても働き続けることができ、次回以降の国家試験を受けることができるように、准介護福祉士という国家資格が生まれるにいたったのです。」
つまり、介護福祉士の試験に受からなかったフィリピンの方をはじめ外国人の福祉介護人材を日本国内に留まらせて福祉施設で働く許可を与えるための措置とも言えるでしょう。
ここで問題なのは、今後、もし多くの外国人が日本の介護業界で働こうとしてきてくれた場合、それはそれで良いことなのかもしれませんが、もし介護業界で外国人労働者への支払賃金が低かったりすると、まさに連合の局長が談話で話されているように「(介護業界全体の)賃金引き下げにつながる懸念がある」ということになります。
人材不足の介護施設も外国から低い賃金で多くの労働者を受け入れることができれば、それは助かるかもしれません。 しかし、それは同時に日本人の介護士・ヘルパーを含めた介護業界の低賃金化がさらに加速する心配もあります。 低賃金で(フィリピンやベトナムなどからくる人にとっては、本国の給与と比較すればそうではないかもしれませんが)外国からの多くの介護職を雇用できる状況になれば、正直、彼らと同じような賃金で介護職を求める人が日本人の中でどれくらいいることでしょう。 そのような状況になれば、賃金が他業界と比較して更に引き下げられた介護業界に魅力を失い、介護職を目指そうとする日本人は、増えるどころか少なくなるのではないでしょうか。
また、介護士やヘルパーが外国人ばかりになれば、介護サービスを受ける高齢者の方々とのコミュニケーションの問題、文化や風習の違いからくる誤解なども起こるかもしれません。
それにいつかは結局、外国人労働者も同じように自分が働いている業界の賃上げを求めてくるでしょうし、たとえ彼らを低賃金で雇えたとしても、それは一時的なことだと思えます。
准介護福祉士制度が、海外からの人材を受け入れるときに質の担保なくして彼らを際限なく受け入れてしまうことになり、その結果、介護業界全体の賃金の低下や提供する介護サービスの質の低下を招くなら、長い目で見て福祉人材確保や介護業界全体にとってマイナスになるかもしれません。
連合の逢見事務局長の言われるように、福祉人材の確保については考えなければいけませんが、経過措置としての准介護福祉士制度は、やはり廃止に向けた検討を行う必要があるのだと思います。